
■早期の罹災証明書発行を可能にする、全国初の取り組み
安心安全なまちづくりをめざす東急コミュニティーは、自治体との協定にもとづく災害レジリエンス強化に取り組んでいます。合同訓練などを通し、災害時における早期の生活再建に向けた官民の連携体制と具体的な対応手法の構築を図っています。
当社において先行した取り組みを行ってきたのが、北海道北広島市です。同市は2018年9月6日の北海道胆振東部地震で被災し、被災者の生活再建に当たるなかで浮かび上がった課題が、罹災証明書の発行に際する住家の被害認定調査を迅速化することでした。被災者が公的支援を受けるために必要な罹災証明書は、住家の被害状況調査・認定を経て発行されますが、自治体職員が現地に臨場する必要があり、被害件数が多数にのぼる大規模災害では、避難所運営や支援物資など、対応が多岐にわたるため、調査への人員確保が難しく、罹災証明書の発行までに時間を要してしまう状況にありました。
その課題の解決を図るため、東急コミュニティーは北広島市と連携し、民間企業が被害認定調査に携わることができる体制の整備に向けた協議を開始しました。2022年には、その結果を踏まえて北広島市から内閣府へ、必ずしも自治体職員の臨場を要することなく調査・認定を可能とすることを提案。2023年5月には内閣府より、的確性の担保が可能であれば、マンション管理会社などの民間企業からの情報共有により、自治体職員の臨場なしに被害認定を行えることが明確化されました。

体制の前提となるのは、調査の的確性が担保されていることです。当社はこの過程で、北広島市と住家被害認定調査に関する共同研究協定を締結し、より実践的な対応方法と実施体制の確立を図ってきました。さらに、2024年2月には内閣府からの通知を受けて、「災害時の応急対応による被害調査結果の提供及び利用に関する協定」を新たに締結しました。管理組合との事前合意のもと、当社が災害時に住家の被害調査を実施し、北広島市は当社から提供を受けた資料に基づいて被害認定を行うことで、より迅速に罹災証明書を発行する内容です。こうした体制の構築は、全国初の事例となりました。
さらに私たちは、対応品質向上のために従前から導入してきた当社オリジナルの施工管理システム「Field‘s EYES(フィールズアイ)※」に、内閣府の住家被害認定調査票を実装し、情報把握の正確性を検証するなど、総合不動産管理会社の知見を活かして体制構築を推し進めました。
※「Field‘s EYES」は、施工品質管理や災害時の情報集約を目的とした当社オリジナルのシステムです。

■北広島市の経験を渋谷に展開
当社はさらに2024年10月、住家被害認定調査などに関する共同研究協定を東京都渋谷区と締結しました。被害調査の迅速化は全国各地に共通する課題であり、渋谷区内だけでも数多くの建物を管理する当社は、北広島市における経験を活かした、渋谷区のさらなる防災力の強化に取り組んでいます。

連携体制の構築に向けた検討のため、2025年3月には渋谷区との合同訓練を実施。渋谷区の担当課職員15人が参加し、座学や当社研修施設の設備を利用した実習を通して、東急コミュニティーの建物調査に関するノウハウを共有しました。今後も共同研究を継続して、渋谷区がめざす「しなやかでタフ」な街の実現に貢献していきます。

■“あたりまえの毎日”を支える企業として
全国各地の自然災害が激甚化し、南海トラフ地震や首都直下地震も近い将来に発生する確率が高いと予測されるなか、有事の際の一日も早い生活再建へ平時から取り組みを重ねることは、安心安全で快適な“あたりまえの毎日”を支えることに直結します。東急コミュニティーは、総合不動産管理会社として培ってきた知見を活かし、社会課題を解決するソーシャルカンパニーとして、さらなる災害対策を進めていきます。