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マンション再生の観点から

マンション再生としての改修工事は建替えとは対称的な位置にあり、管理組合にとって大規模な工事と考えられます。
一般的に管理組合が行う大規模改修工事は、建築基準法上の「建築物の主要構造部の一種以上について行う過半の修繕」という規定の工事とは異なり、「足場を仮設して行う外壁等の改修工事」として行われていることが多いです。

しかし国土交通省のマンション標準管理委託契約書のコメントには「建物の全体又は複数の部位について、修繕積立金を充当して行う計画的な修繕又は特別な事情により必要となる修繕等をいう」と規定されており、外壁等改修工事はそれの一部と考えられます。
計画的な修繕はマンションの長期修繕計画にあらわされていますが、マンション再生の計画は現在のところ表記されていません。

マンション再生と建替え

マンションの寿命を特定するのは難しいですが、一般的には築65~70年といわれています。しかし現時点では築30年~40年で建替えが行われていることが多く、建替えの検討期間を10年間と考えると、築20年~30年前後の修繕計画が今後の「修繕・改修」か「建替え」かの大きな分岐点になると考えられます。ここでは、築20年~30年前後の維持・修繕的な工事と改修工事とに分けて工事事例等を紹介します。尚、10年超で実施される外壁等改修工事(シーリング工事、躯体補修工事、塗装工事、防水工事等)の工事事例は省略します。

修繕工事事例(長期修繕計画上の項目)

各戸玄関扉の修繕・改修

立地環境や使用状況によって変化しますが、一般的に鋼製建具の交換修繕は築30年前後、アルミサッシについては築40年前後のマンションで検討されます。このような建具の修繕方法として、建具枠の上に新規建具枠を被せる「被せ工法」、既存建具を撤去する「撤去工法」、そして撤去工法のうち、躯体等の破壊を最小限に押え工期を短縮した「引抜き工法」などがあります。

給水管の修繕・改修

給水管の修繕・改修はその建物の竣工年や、実際の状況によるため、その実施には事前に調査が必要となります。一般的にライニング工法等による既存給水管を延命する「更生工事」は築15から20年目、新規の給水管に切り替える「更新工事」は20年目以降に検討、実施されます。それぞれメリット、デメリットがあり十分な検討を必要とし、各マンションでどの方法が最適であるか考慮する必要があります。

マンション再生の推進

修繕・改修の費用算出例
(マンションの建替えか修繕かを判断するためのマニュアル:老朽度判定に基づく)

区分所有法において、建替え決議を行うにあたっては、建替え費用のみならず、修繕・改修の費用についても算出し、全区分所有者に通知することが要件とされています。

ここでは「マンションの建替えか修繕かを判断するためのマニュアル」にのっとり、老朽度判定、要求改善水準の設定、修繕・改修の工事内容の設定及び修繕・改修費用を算出した事例の結果について紹介します。

項目 内容
竣工年 1970年
構造規模 鉄骨ALC造地上6階建
延べ床面積 約1980m2
戸数 34戸
既存マンションの概要
項目 内容
施工年 未定
構造規模 鉄骨鉄筋コンクリート造地下1階地上12階建
延べ床面積 3000m2
戸数 41戸
総工事金額 7億1000万円
(■戸当り負担平均1700万円/戸)
建替えマンションの概要

修繕・改修費用の算出(マニュアル分類別)

  • 下記に示す表には、修繕・改修費用算出の細目が表記されてないので、詳細の項目については「マンションの建替えか改修かを判断するためのマニュアル」を参照してください。
項目 実施の有無/工事金額
構造安全性 4900万円
耐震性 未実施
主要構造部の材料劣化及び構造不具合 実施
非構造部の材料劣化及びその他 実施
項目 実施の有無/工事金額
防火・避難安全性 2070万円
内部延焼に対する防火性 未実施
避難経路の移動容易性及び安全性 未実施
2方向避難 実施
項目 実施の有無/工事金額
躯体及び断熱仕様に規定される居住性 1億6250万円
共用部分〈階高・遮音性〉 未実施
共用部分〈バリアフリー性〉 実施
共用部分〈省エネルギー性能〉 実施
専有部分、専用使用権のある共用部分の
  • 面積のゆとり、バリアフリー性
実施
  • その他
未実施
項目 実施の有無/工事金額
設備の水準 1億5530万円
共用設備〈消防設備〉 実施
共用設備〈給水設備〉 実施
共用設備〈排水設備〉 実施
共用設備〈ガス管〉 実施
共用設備〈給湯設備〉 実施
共用設備〈電気設備〉 実施
専有部分〈給水設備〉 実施
専有部分〈排水設備〉 実施
専有部分〈ガス管〉 実施
専有部分〈給湯設備〉 実施
その他専有部分の諸設備に関する項目
  • 共用設備〈IT関連、共聴設備、オートロック等〉
実施
  • 専有部分の諸設備〈コンセント、スイッチ他〉
実施
項目 実施の有無/工事金額
エレベーターの設置状況 1300万円
エレベーター設置状況・停止階等 実施
1.修繕・改修工事総工事金額    4億50万円
  • 共用部分合計  1億9750万円 (共用部分/全体=49.3%)
  • 専有部分合計  2億300万円 (専有部分/全体=50.7%)
  • 専有部分の改修はスケルトンにしての改修であり、床暖房、浴室暖房乾燥機等設備機器については最新の設備を設置した。

■建替え総工事金額との比較
 修繕・改修総工事金額/建替え総工事金額= 4億50万円/7億1000万円 = 56.4%

2.修繕・改修工事の戸当り負担額  1178万円/戸

■建替え工事の平均戸当り負担額との比較
 修繕・改修/建替え戸当り負担額= 1178万円/1700万円 = 69.3%

このように、この事例では建替え工事金額の56.4%にあたる費用が修繕・改修工事にはかかり、専有部工事をスケルトンにしての計画とはいえ、多額の工事金額であることがわかります。又、専有部分の仕様を下げることでかなりの減額も可能であることもうかがえます。

まとめ

マンション再生は、維持・修繕工事と改修工事が複合的に実施されて初めて実現される、改修改良工事であります。現在の長期修繕計画には改修要素があまり盛り込まれていません。今後は、長期改修計画(修繕計画+改修計画)を作成し、管理組合で充分議論・検討していく必要があります。又、改修工事の内容は時代のニーズ、管理組合のニーズあるいは改修技術の進歩により年々変化するものであり、定期的な見直しも当然必要となってきます。スクラップ&ビルトの時代からストック長命化へ向かう現在、今まで以上に改修改良工事は重要となり、それでは解決出来ない場合に建替えに進むものと考えられます。

マンション再生を決定するのは区分所有者の合意であり、それを強く推し進めるためには、日頃よりの「健全なコミュニティーの形成」が最も重要だと考えます。

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